いつかきっとがもう間近

現のこと、夢のこと、

体育館の天井

今週のお題「もしも魔法が使えたら」

昔、マンモス校に通学していた。月曜日の朝は、体育館に全校児童が集合して、朝礼があった。終業式の日も始業式の日も、全校児童が体育館に集合して、立って整列し、先生方のスピーチを聞くのだった。

 

立っていても、目の前の黒い頭だらけの視界には、訓示を述べておられる先生の顔はほとんど見ることができない。声だけが延々と続き、その声さえも遠のいていった。

 

ああ、つまらない、つまらない、つまらない、起立の姿勢を崩すと、前後ろ左右の制服の布に当たってしまうので、身を縮めるようにして、体育館の天井を見た。すると、頭上近くに、間仕切りであろうネットカーテンのロープが所在なさげに、たわんで体育館を横切っていた。

 

あ、サーカスだ!とすぐにわかった。いつか見たことがあるピエロの綱渡り。あのロープに私ものりたい、今ならあのロープを器用に渡れるだろう、もしも私に魔法が使えたら、今こそ飛んでロープに上がれるのに。

 

もしも魔法が使えたら?と本気で考えていたのは、小学4年から5年の1年間だった。なぜ思わなくなったのかというと、背が伸びて教頭、校長先生の顔が見えるようになったから。

 

まさか、真面目に訓示を聞いていたわけではない。顔が見えたら、家ではどんなお父さんなのかなぁ?とか、さっきも同じ話をしていたなぁ、堂々巡りだなぁ、子供に嫌われいるのかなぁ?とか、想像するのに時間を割いていたから、魔法使いまで手がまわらないだけだった。