読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

いつかきっとがもう間近

現のこと、夢のこと、

慄くアイツ

現 の 事

お題「我が家のペット」

人間が慄き震えることは、まず滅多にあることではない。またあってはならないことだ。だが、飼い犬のアイツは月に一度、全身で慄き震える場面がある。

助手席に座っているアイツを抱きかかえてそのまま、その建物に近づいていくと、入口にも達していないのに私の心臓まで響くぐらい震えだすのだ。オノマトペでいうと、ガタガタガタ!! と大きくしかも小刻みに震えている。

「大丈夫だって。誰もあんたをとって喰おうとはおもってないよ」とアイツに囁きながら、半ば強引に、可哀想という仏心に蓋をして、ペットショップに懸命に向かう。

ようやく、ペットショップのお姉さんに引き渡す段階になると、その震えは目で確認できるほど、大きなものになる。だが、そこは犬の心理を熟知しているお姉さん。アイツをあやしながら、すぐに隣りの部屋に連れて行ってしまう。

収入の大きなパーセンテージを占めるトリミング。収益をあげるためには、犬を不憫に思って連れて帰ってしまう客にその隙を与えないようにすべし! なんて、ペットショップマニュアルにでも書いてあるのだろう。

かくして、私の方が心細くなりながらも、ペットショップの良心にアイツを託して二時間弱、家で作業終了の電話がかかってきるのを今か今かと、心待ちしている。

電話がかかってくると、ベランダで竿に干しかけていたバスタオルも、再び洗濯籠に戻して、ペットショップにひた走るのである。

そうまでして迎えに行くのだが、こざっぱりとスッキリした顔つきで、アイツは尻尾をふって喜んでいる。

ペットショップの中で、虐待をされているのではないか、アイツはデブだから他の犬にいじめられているのではないか、うつらうつらと妄想していた私はなんだったのだろうか。とにもかくにも、こうしてアイツの震えは来月まで、おさらばだ。

広告を非表示にする