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いつかきっとがもう間近

現のこと、夢のこと、

手帳 その2

 昔、転校していった学校の教室で、はじめて口をきいてくれた女の子が赤いプラスチックの表紙の小さな手帳を持っていた。あの当時の体格は、今の3分の2くらいの大きさで、それでも小さな手帳と思ったので本当に小さかったのだと思う。

手帳の規格は、と、ここまで書いてネットで探してみた。

「手帳 規格」と検索をかけて早速みつける。本当にネット社会で良かった。知らないことは知ろうとしないことだけ。図書館に行って、エッチラオッチラ探すなんてことは、よっぽどレアなことだろう。

女の子の小さな手帳は、おそらく「ダイヤメモのS」だった。女の子はその小さな手帳に、算数P18 問題20 、国語音読などと几帳面なきれいな文字でその日の忘れてはいけないこと、例えば宿題や明日の小テストに出ると先生が言っていたことなどを書いていた。

隣りの席で見ていた私は、ああ、この子、育ちがいいんだ、きっとお父さんに手帳を買ってもらったんだと勝手に妄想して、少し羨ましかった。

私といえば、コクヨの「連絡帳」と印刷された大きなノートに、大きな汚い字でガサガサと宿題情報を書きなぐっていた頃なので、女の子の小さな手帳は一際輝いて見えたのだ。

親になって、我が子達があの女の子の年頃になったとき、思い出して小さな手帳を買って渡したことがある。娘には赤っぽい表紙、息子には水色の表紙。娘はもったいないからと、机の抽斗にキチンと納めたまま学業を終えた。息子は初めの3ページまで、小さな文字で宿題などを書いていたようだが、「ぼく、書かなくても忘れないよ」と不審な発言をしたのち、書くことはやめたようだ。

やはり、手帳は憧れのまま、思い出の中に強烈に存在する。

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