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いつかきっとがもう間近

現のこと、夢のこと、

布団の回想

お題「ふとん」

 昔、子どもの頃に寝ていた布団は、何度も母が綿を洗ってはり直した綿布団だった。布団を太陽で干す場所さえあれば、少しはマシになったのかもしれない。だが、ベランダのない借家暮らしの我が家では、湿って重くなった布団を朝起きたら、狭いもんだからすぐさま押し入れに入れる。そして、夜に寝る直前におもむろに机を片付けて布団を敷くという繰り返しだった。厳冬期など、布団のなかに電気炬燵を足元に入れていたが、布団に全身の体温が持っていかれる感じで、ブルブルと震えがきて寝付けなかった。また、寝ていると、首から肩、胸にかけて布団に羽交い締めにされているようで、寝返りをうつどころではなく、身動きさえとれない、そんな湿気の重さなのだ。その頃、金縛りにあうことは珍しくなかったことも、「小学生にしては胸が大きいから肩こりなんじゃない」などと陰口された忌々しい肩こりも、あの綿布団のせいだったと思うのだ。

 そんなこんなで、結構早くから羽毛布団に家族全員分、買い換えた。母も恐ろしく重く冷たい布団にうんざりしていたに違いない。初めて羽毛布団で眠った時には、本当に暖かく、そして軽かった。眠りがこれほど心地よいものだとは思いもしなかった。羽毛布団を一度使うと、もう綿布団には戻れない。それから何十年も布団でいやな思いをしたことはないのだが、数年前、隣りの県の温泉旅館に泊まったときのことだ。

 なんと、その旅館は未だに綿布団を客用に用意していた。調べたわけではないが、経験から旅館は羊毛布団が多いと思うのだが。ひさしぶりに綿布団と再会した。だが、昔の記憶とは異なり、嫌ではなかった。それは何故なのかと考えてみると、部屋が暖かいのだ。エアコンがガンガンにきいていて、布団が温まっていてる。中綿がほっこりとして柔らかい。ああ、これが本来の綿布団のあり方なんだと考え至った。

 昔は寝る前、熱いお風呂に入って、「湯冷めするから早く寝なさい」と言われたものた。暖房器具が練炭の火鉢や灯油のストーブしかない時は、家族が寝る頃には全て消されていて、夜は本当に寒かった。それから、ファンヒーターという便利なものが出てきたが、空気が悪くなるせいで寝る前は空気の入れ替えをしていたから本当に寒かった。 そんな寒い生活を一変させたのは、エアコンの登場だ。常に空気は私の味方だ。夏は涼しく冬は温かい。もしかすると、練炭や火鉢の頃に羽毛布を手に入れていたなら、ファンヒーターの頃に羊毛布団を使っていたら、すべて丸く納まっていたような気がする。そうだ、エアコン生活の現在、綿布団で寝てみようか。

 

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